三九郎

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松本に伝わる火祭り

松本では「繭玉団子」を火祭りの火であぶって食べる風習があります。その火祭りが「三九郎」です。

お正月に飾る松飾や注連飾りにはお正月の神様が寄り付くと昔から信じられており、粗末には扱えないということで地域中の正月飾りや縁起物をひとつの場所に集めて焼く「火祭り」が行われました。もとは宮中行事の「左義長」が起源といわれている小正月の火祭りですが、現在では道祖神信仰や繭玉飾り(養蚕神信仰)と結びついている例が多く見られ、かつての養蚕地帯においては養蚕繁栄の祈りも多分に込められていました。松本市周辺ではこの火祭り行事を「三九郎」という独特の名で呼んでいるのです。

「三九郎」は木で組んだ骨組みの周りに藁や松の枝を縛りつけやぐら状の物をこしらえて、そこに正月飾りや縁起物のお札やダルマなどを飾り付けて燃やします。こうすることでその年の豊作や無病息災を祈るとともに、燃え上がる炎と高く立ち上る煙に乗せ、お正月の神様を空高くお送りするのです。

正月飾りや縁起物を燃やす「三九郎」の炎は尊く神聖なものでそこには特別な力が認められており、これで繭玉団子をあぶって食べるとその年は病気にかからないとか、むし歯にならないなどと言い伝えられています。そのほかにも「書初めを燃やして高く舞い上がると書の腕前が上がる」「三九郎の火にあたると若返る」「火の粉が高く立ち上るほど豊作が期待できる」ともいわれています。

名前の由来

このような小正月の火祭りはほぼ全国的に行われているようです。しかし「三九郎」「どんどやき(どんどんやき)」「さぎっちょ」「塞土焼き(さいとやき)」などその呼び名は地域によってまちまちです。

ちなみに「三九郎」という呼び名の由来は、中心となってこの行事をとりおこなった神主さんの名前であるとか、道祖神祭りの際に供えられる人形の名前であるともいわれています。

ほかに面白いものでは、もともと「さんくろう」は「三苦労」(病、災厄、重税)という三つの苦労を追い払う祭りだったものが、藩政に対する批判として取締りの対象となるのをおそれ、「三九郎」の文字をあててカモフラージュしたのだという説もあり、これが一番もっともらしいように思われます。しかし残念なことにどれが本当なのかは定かではありません。